アンジェリーナ・ジョリーのインタビューを英語で読んでみよう~#BlackLivesMatter について語る
2020年6月にUK版のハーパーズ・バザー(Harper’s BAZAAR)のインタビューで、女優であり国連のUNHCRの特使としても活動するアンジェリーナ・ジョリーがアメリカを中心に起こっている黒人に対する人種差別への抗議活動(ブラック・ライブズ・マター運動)について語りました。養子として迎えた黒人の娘を持つ母親としてこの問題に言及している部分を抜粋し、日本語訳付きで英語表現を解説します。他に、自身が取り組んできているドメスティック・バイオレンスの問題やコロナウイルスの感染防止のための自主隔離中に読んだものや見たものについても語っているロングインタビューの英語全文は、ハーパーズ・バザーのウェブサイトから読むことができます。
このロックダウンの期間は、あなたにとって本当に大切なものを考えさせるきっかけになりましたか?
I was fortunate years ago to travel with the UN to frontlines around the world and put into perspective what really matters. Having six children, I am reminded daily of what is most important. But after almost two decades of international work, this pandemic and this moment in America has made me rethink the needs and suffering within my own country. I am focusing both globally and domestically; they are of course linked. There are more than 70 million people who have had to flee their homes worldwide because of war and persecution – and there is racism and discrimination in America. A system that protects me but might not protect my daughter – or any other man, woman or child in our country based on skin colour – is intolerable. We need to progress beyond sympathy and good intentions to laws and policies that actually address structural racism and impunity. Ending abuses in policing is just the start. It goes far beyond that, to all aspects of society, from our education system to our politics.
私は幸運にも何年も前に国連と共に世界中の第一線を旅して、何が本当に大切かということがよくわかったの。6人の子どもたちを持って、何が最も重要かということを日々思い出させられてるわ。でも、ほぼ20年間におよぶ国際的な仕事の後、このパンデミックやアメリカのこの瞬間によって、自分自身の国で必要とされていることや苦しみについて再考させられています。私は世界と国内の両方に注目しています。もちろんそれらは関連していますからね。世界では戦争や迫害によって自分の家から逃れざるを得なかった人たちが7000万人以上います。そしてアメリカには人種差別と不公平な扱いがあります。私を守ってくれるけれど、肌の色を理由に、私の娘、または私たちの国の他の男性、女性、子どもたちを守ってくれないかもしれないシステムは、耐えられない。私たちは共感や善意を超えて、構造的な人種差別や罰を受けないことに対して実際に対処する法律や政策を進める必要があります。警察の取り締まりにおける虐待を止めることは始まりに過ぎません。私たちの教育から政治まで、社会のあらゆる側面まで広がるものなのです。
UNHCRの特使として世界における難民の問題等に取り組んできた活動家として、そしてまた養子として迎えた黒人の娘の母親として、現在の#Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター運動)についての考えを述べています。
“put into perspective” は「(事の)重要性を実感する、実感させられる」という意味です。“perspective” は「景色」や「見方」という意味で、“From my perspective, …”(私の意見では、・・・)というようなフレーズでも使われます。
アンジェリーナ・ジョリーは、“this moment in America”「アメリカにおけるこの瞬間」という言い方で明確には言っていませんが、これは現在アメリカで起こっているブラック・ライブズ・マター運動(黒人への人種差別に対する抗議運動)のことを指しています。アメリカの人種差別のことを “structural racism” 「構造的な人種差別」と表現しており、これはレディ・ガガが “systemic racism” という単語を使って表したものと同じものを指しています。共感や善意といった個人の信条や感情レベルではなく、教育や医療といった社内の制度に根付いてしまっている構造的な人種差別を変えるための法律や政策が必要だと主張しています。“impunity” は「罰を受けないこと、免れること」という意味で、これまで黒人に対して暴力行為をはたらいてきた人(警官も含め)が妥当な処罰を受けてきていないことを指します。
ロックダウンの間にあなたが目にした、最も信頼を回復させたものは何ですか?
The way people are rising. Saying that they are tired with the excuses and half-measures, and showing solidarity with each other in the face of inadequate responses by those in power. It feels like the world is waking up, and people are forcing a deeper reckoning within their societies. It is time to make changes in our laws and our institutions – listening to those who have been most affected and whose voices have been excluded.
人々が立ち上がっている方法ね。言い訳や中途半端な対策はうんざりだと言い、権力を持つ側の不十分な対応を前にしてお互いに結束を示しているわ。世界が目を覚まし、人々が社会の中でより深い考えを押し進めているように感じる。もっとも影響を受けてきたのにその声が除外されてきた人たちに耳を傾け、私たちの法律や制度に変化を起こす時ね。
“those in power” の those は「人々」という意味、power は「権力」という意味なので、「権力を持っている人々」つまり警官や政治家などを指しています。“It feels like … ”は「…のような感じがする」という表現で、感じている主体は自分(I)ですが、I ではなく it を主語として表します。次の “It is time to …”は「…する(べき)時だ、…する時が来た」という表現です。ジョリーは、構造的な差別を内包するアメリカの法律や制度に変化を起こすべき時が来たのだと言っています。
人種や人種差別にまつわる問題について子どもたちに教えるのにどんなアドバイスがありますか?
To listen to those who are being oppressed and never assume to know.
抑圧されている人々の声を聞くこと、そして決してわかっていると思わないこと。
最後に紹介するのは、アンジェリーナ・ジョリーの子どもたちへのアドバイスです。“surronding” は「取り囲む」という意味の動詞、surround の分詞形で、issue(課題)を後ろから修飾しています。 “assume” は「推測する、思い込む」という意味の動詞です。勝手に憶測するのではなく、実際に抑圧されている当事者の声を聞くことをアドバイスとして挙げていますが、これまで世界の問題に取り組んできた彼女らしい、とても重みのある言葉に感じました。