大坂選手 おめでとう!US Open 2020優勝スピーチ ~英語原文と日本語訳~

2020年9月12日、テニスの全米オープンで2018年以来の2度目の優勝を果たした大坂なおみ選手。その表彰式での優勝スピーチを紹介します。
決勝戦では世界ランク27位のビクトリア・アザレンカ選手と対戦し、1-6で第1セットを落としながら立て直して第2、第3セットを連続で取って逆転勝利を収めました。
試合後のスピーチや会見では、いつもその素直で素朴な話し方や内容が話題になる大坂選手。この優勝スピーチでも、飾らない自分の言葉で相手選手への感謝や、話題になったマスクについてのメッセージを述べました。彼女の使っているそのままの英語から学んでみましょう。

上の映像の再生ボタンを押して、スピーチを聞きながら、下の英語の原文、日本語による訳と解説をお読みください

Firstly, I wanna congratulate Vika. I actually don’t wanna play you in more finals, I didn’t really enjoy that. It was really a tough match for me. And yeah, really inspiring for me because I used to watch you play here when I was younger so just to have the opportunity to play you is really great and I learned a lot from you. So thank you.

初めに、ビカにお祝いを言いたいです。実のところ、私はあなたとはもう決勝戦で試合をしたくないわ。楽しめなかったもの。私にとって厳しい試合でした。それに、私はもっと若い頃にあなたがここで試合をするのを見ていたから、あなたと試合をする機会を持てたことだけでも素晴らしいことだったし、あなたから多くを学びました。だからありがとう。

スピーチの冒頭、まずは決勝戦で対戦したビクトリア(ビカと呼ばれているようです)への賛辞を述べています。このようにテニスの試合後の勝者のスピーチでは、まず対戦した相手を讃えることから始めるのが慣例になっています。
congratulate は「祝う、祝辞を述べる」という意味の動詞で、このように「お祝いを言わせてください」と言うのには “I want to (wanna) congratulate you.” や、より丁寧な言い方で “I’d like to congratulate you.” という表現が使われます。この名詞形の congratulation は、“Congratulations!”(おめでとう!)という使い方をします。
続いて大坂選手は、厳しい試合だったから「楽しめなかった」という言い方で、相手が手強かったことを伝えています。こういう素直な言い方が大坂選手らしいですね。
“I used to watch you play …” は、「…したものだ」という過去の習慣を表す意味の used to という表現を使っています。watch you play は「あなたがプレイするのを見る」という意味で、watch 人 V(動詞)「人がVするのを見る」という文法が使われています。
“when I was young” だと「私が若い頃に」という意味ですが、大坂選手はまだ22歳と現在も若いので、「より若い頃」となるように “when I was younger” という言い方をしています。何歳までを「若い」ととらえるかですが、25歳くらいまでは “when I was young” と言うと、“You are still young!”(あなたはまだ若いじゃない!)とつっこまれてしまうかもしれないので、この “when I was younger” という言い方がおすすめです。

I wanna thank my team. (中略) I know the beginning of the year wasn’t that great, so yeah, thank you for believing in me. (中略) I wouldn’t be here without you guys.

私のチームに感謝したいです。(中略)今年の初めは素晴らしいものではなかったとわかってるから、そうね、私を信じてくれてありがとう。(中略)あなたたちなしでは、私はここにいられなかったわ。

次に、自分を支えてくれたチーム(コーチなど)や、試合に関わった人たち、家族に向けて感謝を述べています。(これも優勝スピーチの慣例です。)
“thank you for believing in me” は英語でよく聞くフレーズで、「私を信じてくれてありがとう」という意味です。人の言動などではなく、「その人自身を信じる」という意味で believe in 人 という表現が使われます。
最後に自分の家族にも触れた後、“I wouldn’t be here without you guys” と言っていますが、この would は「~だろう」という推量の意味で「あなたたちなしでは、私はここにいないだろう」という意味です。つまり、「あなたたちがいたからこそ、私はここにいられる」ということですね。you guys は親しい複数の人たちに向けて「あなたたち」と言う時に使う表現です。guy は「男」という意味ですが、この guys の場合は、相手が男女混合や女性のみであっても使われます。

Yeah because I always see everyone sort of collapse after match point, but I always think you may injure yourself, so I wanted to do it safely.

ええ、いつもマッチポイントの後にみんなが倒れこむ感じなのを見るんだけど、怪我をするかもしれないっていつも思っていて、だから私は安全にやりたかったんです。

試合を決めたマッチポイントの後、ゆっくりとコートに横たわった大坂選手。通常はマッチポイントを決めた後にすぐにコートに倒れこむことが多い選手が多いので、インタビュアーから “What was running through your mind?”(あなたの頭の中を何が駆け巡っていたんですか?)と聞かれたことに対して答えています。
injure は他動詞で「~を傷つける、~に怪我をさせる」という意味なので、「自分を傷つける、自分が怪我をする」と言う場合は injure myself という言い方をします。mayは助動詞で「~かもしれない」という意味なので、“you may injure yourself” は「怪我をするかもしれない」という意味になります。この you は「あなたが」という意味ではなく、「一般的に人が」という意味で使われています。倒れこみたかったけど安全にやりたかった、という何とも大坂選手らしいユーモラスな回答ですね。

I mean, for me, I just thought it would be very embarrassing to lose this in under an hour, so I just have to try as hard as I can and stop having a really bad attitude.

ええと、私にとっては、ただ、1時間以内で負けてしまうことはとても恥ずかしいだろうって思ったんです。だからできる限り頑張って、とても悪い態度を取るのをやめなきゃいけないと思いました。

インタビュアーによると、第1セットを落とした後に逆転して決勝戦を勝利した選手は1994年以来初めてとのこと。“What was your turning point?”(何があなたのターニングポイントだったんですか?)という質問に対する答えです。
embarrassing は「恥ずかしい」という意味の形容詞で、シャイで恥ずかしい、という意味とは違って、何か恥ずべきことをして恥ずかしい、という意味で使われます。この動詞形 embarrass は「恥ずかしい思いをさせる」という意味で、一緒にいる人が非常識など行動などをして恥ずかしい時には、“You are embarrassing me!”(恥ずかしいでしょ!)(直訳すると、「あなたたは私を恥ずかしがらせている」)というフレーズを使います。

Well, what was the message that you got? That was more the question. I feel like the point is to make people start talking.

ええと、あなたが受け取ったメッセージは何でしたか?それがより問題です。私は、人々に話し始めてもらうことがポイントのように感じています。

このUSオープンでは、出場した7試合すべてでコートへの入場時に過去に黒人差別によって亡くなった人の名前が書かれたマスクを付けていた大坂選手。2020年5月にアメリカを中心に始まった Black Lives Matter 運動に関してスポーツ選手として積極的な発言を続けてきた彼女らしい行動でした。インタビュアーから、“What was the message you wanted to send?”(あなたが伝えたかったメッセージは何だったんですか?)と聞かれた大坂選手の回答です。
make people start talking は「人々に話し始めさせる」という意味で、make 人 V(動詞)「人に~させる」という文法が使われています。この時の make は使役動詞と呼ばれます。
USオープンを通じてマスクによってメッセージを発信し続けていた大坂選手が優勝したことにより、彼女のメッセージはより大きな注目を集めることができたと言えるでしょう。まだ若干22歳ながら、4大大会で3度目の優勝を飾ったこと、さらに自分の意見を自分の言葉で素直に表明できることに、本当に尊敬します。改めて、おめでとう、大坂選手!!

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