ビリー・アイリッシュの#BlackLivesMatterの怒りのメッセージ
2020年5月25日、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで起こった、白人警官が無抵抗の黒人男性(容疑者)の首を圧迫し続け、窒息させて死亡させた事件。その場にいた人がビデオに一連の様子を収めており、その恐ろしい映像と共にこの理不尽な事件は全米に広まり、各地で激しい抗議活動のデモが起こっています。連日、デモ参加者と警察官の間の激しい対立や一部暴徒化した人たちによる店への襲撃などが日本でもニュースで取り上げられていますね。この事件をきっかけに起こったブラック・ライブズ・マター運動について、アメリカの多くの有名人も声を挙げていますが、その1人が2020年のグラミー賞で最年少18歳で主要4部門を制覇したアーティストのビリー・アイリッシュです。彼女がInstagramに投稿した文章の全文(原文ママ)と日本語訳を紹介します。
※ 少し読みにくいですが、彼女が投稿した文章の原文のまま載せています。多くの部分は協調の意味を込めて大文字で書かれており、アポストロフィー(’)やカンマ(,)、?が省略されている文章も多く見られます。FUCKINGという非常に強く汚い単語(アメリカでは放送禁止用語)も多用されていますが、このニュアンスを日本語訳で出すのには難しいのですが「クソ」という言葉で表現しました。
今週私はずっと、これについて細心の注意を払って発言する方法を考え出そうとしていた。私は巨大なプラットフォームを持っているから、敬意を持って、何を言うか、どうやって言うかをよく考える時間を取ろうと本当に努力してる・・・でも、そんなのクソくらえ、私はもう話し始めるよ。
IF I HEAR ONE MORE WHITE PERSON SAY “aLL liVeS maTtEr” ONE MORE FUCKING TIME I’M GONNA LOSE MY FUCKING MIND. WILL YOU SHUT THE FUCK UUUUUUUUUUUUUUUUUUP????. NO ONE IS SAYING YOUR LIFE DOESNT MATTER. NO ONE IS SAYING YOUR LIFE IS NOT HARD.
もしもう一度でも白人が『すべての命が重要』って言うのを聞いたら、私の頭がクソおかしくなる。クソ黙ってくれない????誰もあんたの命が重要じゃないなんて言ってない。誰もあんたの人生が辛くないなんて言ってない。
NO ONE IS SAYING LITERALLY ANYTHING AT ALL ABOUT YOU…… ALL YOU MFS DO IS FIND A WAY TO MAKE EVERYTHING ABOUT YOURSELF. THIS IS NOT ABOUT YOU. STOP MAKING EVERYTHING ABOUT YOU. YOU ARE NOT IN NEED. YOU ARE NOT IN DANGER.
誰もまったくあんなのことについて何とも言ってない。あんたたちみたいなクソくらえな連中がやることと言えば、全部を自分のことにする方法を見つけることだよね。これはあんたたちについてのことじゃない。全部を自分のことにするのはやめろ。あんたは困ってない。あんたは危険にさらされてない。
この事件に対する抗議の声を挙げる時に、SNSで使われているハッシュタグの1つが#blacklivesmatter。”Black lives matter.” は「黒人の命は重要」という意味で、livesはlife(命)の複数形、その後に続く動詞のmatterは「重要である」という意味です。日常会話で使われる表現としては、”It doesn’t matter.”(それは重要ではない=どうでもいい・どちらでもいい)というフレーズがあります。blackは黒人の人を指す言い方で、差別的な意味でも使われることから、通常使われている正しい呼称はAfrican American(アフリカ系アメリカ人)ですが、こういった黒人運動の際には敢えてblackという言葉がプライドを持って使われます。
さて、その”Black lives matter”対して「黒人の命だけが重要なのではない、みんなの命が重要なんだ」という主張から、”All lives matter”というハッシュタグを使う人たちもいるのですが、そもそも黒人の人の命が白人に比べて軽視されている社会の実情に対して抗議しているのに、違う主張にすり替えられている批判も生まれています。ビリー・アイリッシュはこの投稿で、今は”All lives matter”ではなく”Black lives matter”なんだということをかなり強い喧嘩腰の言い方で主張しました。
(あんたたちみたいな最低な奴らが理解する唯一の方法みたいだから、子どもにするように説明するよ)もし自分の友達が腕に傷を負ってたら、すべての腕が重要だからって友達全員にバンドエイドをあげるのを待つの?違う、あなたは自分の友達を最初に助けるでしょう。だって彼らは痛みを感じていて、困っていて、血を流しているんだから!もし誰かの家が火事で中に人が閉じ込められていたら、すべての家が重要だから、あなたは消防にその区画のすべての他の家に行かせるの???違う!彼らはそんなのクソ必要としてないんだから。好き嫌いにかかわらず、あんたたちは特権を与えられている。ただ白人だからという理由で、社会はあんたたちに特権を与える。あんたたちは貧しいかもしれない。あんたたちは困窮してるかもしれない。それでもなお、あんたたちの肌の色はあんたたちに気づいているよりも多くの特権を与えている。そして、その特権があんたたちを誰かより優れたものにしてるなんて誰も言ってない。ただその特権は、あんたたちが自分の肌の色を理由に生き抜くことに不安を感じる必要なく自分の人生を生きさせてくれている!!あんたたちは特権を与えられているの!!
ビリー・アイリッシュは、腕に怪我をした人や家事の家に閉じ込められた人を例に挙げて、今実際に困っている人を助けるべきなんだと主張しています。
そして出てきたのが、privileged(特権を与えられている)という表現です。privilegeは名詞で「特権」、動詞で「特権を与える」という意味なので、”You are privileged.”は受動態で「あなたは特権を与えられている」という意味です。
WHITE. FUCKING. PRIVILEGE.
もしすべての命が重要なら、なんで黒人はただ黒人だという理由だけで殺されるの?なんで移民は迫害されるの?どうして白人は他の人種が与えられない機会を与えられるの?どうしては白人は、文字通り家にいることをお願いされることに対して半自動式銃を持ちながら反対して良いの?どうして黒人が無実の人々の殺人に反対することで悪党だと呼ばれることは良いの?なんでかわかる????
それが、白 人 の ク ソ 特 権。
DOES WHITE PRIVILEFE AFFECT HISPANIC PEOPLE? NATIVE AMERICANS? ASAIN PEOPLE? YES FOR FUCKING SURE IT DOES. 100000000000000%.
BUT RIGHT NOW RIGHT IN THIS MOMENT…
WE HAVE TO ADDRESS HUNDREDS OF YEARS OF OPPRESSION OF BLACK PEOPLE.
THE SLOGAN OF #blacklivesmatter DOES NOT MEAN OTHER LIVES DONT. ITS CALLING ATTENTION TO THE FACT THAT SOCIETY CLEARLY THINKS BLACK LIVES DONT FUCKING MATTER!!!!!!
AND THEY FUCKING DO!!!!!!
IT MEANS BLACK. LIVES. FUCKING. MATTER.
BLACK LIVES MATTER.
BLACK LIVES MATTER.
BLACK LIVES MATTER.
SAY IT AGAIN.
#justiceforgeorgefloyd
白人の特権がヒスパニックの人たちに影響する?ネイティブアメリカン(アメリカの先住民)には?アジア人には?そう、もしろんクソ影響するよ。100000000000000%。
でも今この瞬間は・・・
私たちは黒人の人たちへの何百年にもわたる抑圧を語る必要がある。
#blacklivesmatter(黒人の命が重要)というスローガンは、他の人たちの命がそうではないという意味ではない。それは社会が明らかに黒人の命がクソ重要じゃないと考えている事実への注意を向けさせているものなんだよ!!!!!!!
そして黒人の命は重要なんだよ!!!!!!
つまり、黒 人 の 命 は ク ソ 重 要。
黒人の命は重要。
黒人の命は重要。
黒人の命は重要。
もう1回言って。
#justiceforgeorgefloyd(ジョージ・フロイドに正義を)
ここで使われたのが、“white privilege”(白人特権)という言葉です。アメリカはこれまでの歴史の中で公民権運動によって奴隷だった黒人が白人と同等の権利を獲得し、世界中から多くの移民を受け入れてきましたが、アメリカ社会には依然として白人が他の人種よりも優位となるwhite privilegeがまかり通っている、という声明です。
最後のハッシュタグ#justiceforgeorgefloydは、事件の被害者であるジョージ・フロイドの死に対する正義を求めるスローガンとして使われています。
いかがでしたか?ビリー・アイリッシュの長文のかなり過激な言い方のメッセージからも、この事件への怒りの強さや、アメリカ国内で過熱している抗議活動が読み取れるのではないでしょうか。抗議活動が暴力化しないことを願いつつ、これだけ大きな運動が起こったことにより人種差別というアメリカ社会の根深い問題が今後改善されていくのか、見守っていきたいと思います。