映画 『リリーのすべて』から、英語表現・英会話フレーズをピックアップ
主役のアイナー・ヴェイナーを演じたエディ・レッドメインがアカデミー賞で主演男優賞にノミネートされ、その妻のゲルダを演じたアリシア・ヴィキャンデルがアカデミー賞で助演女優賞を受賞した、難しい役柄を演じた二人の演技が光る映画です。
男性として生まれ肖像画家として成功を手にしながら、あることがきっかけで自らの性の不一致に気づき、世界初の性別適合手術を受けたアイナーと、変わっていく夫に戸惑いながらも支え続ける妻ゲルダの物語です。実際の人物の伝記映画ですが、映画は史実からは脚色されています。
日常会話が多く、話すスピードも速くないので聞き取りやすく、英語学習におすすめの映画です。
※ 内容には、実際の会話表現と一部ストーリーが含まれます。
見る前にストーリーを知りたくないという方は、注意してくださいね。
Einer: Anything. 何でも
ゲルダがアイナーにある頼み事をする時に使われた一言です。
Will you help me? だけでも「手伝ってくれる?」という意味になりますが、後ろにwith something を付けると、「あることで(手伝ってくれる?)」と、既に手伝ってもらうことが決まっている、頭に浮かんでいるというニュアンスが加わります。ここでは、something(あること)と濁していますが、例えばWill you help me with cooking? だと「料理を手伝ってくれる?」という意味になります。
僕がただのリリーだった瞬間があって、それを彼は見抜いたんだと思う。わかるかい?
女装して「リリー」としてパーティーに参加したアイナー。その日に起こった出来事をゲルダに説明した一言です。
動詞の see には、「見る」の他にも「わかる、理解する」「会う」「交際する、付き合う」などの意味があります。このセリフの初めの see は「(瞬間を)見抜くことができた」という「見る」という意味で使われていますが、2つ目の see はゲルダに「わかるかい?」と問いかける「わかる」という意味で使われています。
Einer: I do. 信じてる
自分の中で目覚めた女性「リリー」を消すことができず、苦悩するアイナー。助けを求めに医者にかかっても精神病とみなされる中、画家としてチャンスを掴んだゲルダが、一緒にパリに行こうと語りかけたセリフです。
work out は「(物事が)解決する、うまくいく、良い結果となる」という意味で、パリに行けば私たち2人にとって物事がうまくいく、と言っています。うまくいくことが私にはわかっているから、”You just have to trust me.”(あなたはただ私を信じなければならない=信じて)と言うゲルダに、アイナーは一言 “I do.” と答えます。
Einer: Nor do I. 僕もだよ
パリで幼なじみのハンスと久しぶりに再会したアイナー。アイナーがリリーになってしまったことについての、ハンスとアイナーの間のやり取りの一言です。
アイナーのセリフ “Nor do I.” は、否定文に続いて「私もそうだ」と言う時の倒置の表現です。”Neither do I.” も同じ意味です。肯定文に続いて「私もそうだ」と言う場合は、”So do I.” と言います。例えば、”I like Japanese food.”(私は日本食が好きだ) “So do I.”(私もだ)という具合です。
あなたが私を美しくした。そして今は強くしている。すばらしい力だわ。
2回目の性別適合手術を終えた後、静かに妻のゲルダに語るリリー。想像を超える苦難を共に乗り越えた夫婦の姿がありました。妻のゲルダに感謝を述べるリリーのセリフを3つ紹介します。
make O(人) C(形容詞) は、「人をCの状態にする」という意味でよく英語で使われる表現です。”You made me beautiful.” は「あなた(ゲルダ)が私を強くした=あなたのおかげで私は美しくなった」という意味です。2つ目の文は現在進行形で「今は私を強くしてくれている」という意味で、妻の存在の大きさを語っているセリフです。
私の望みが聞こえたでしょ、ゲルダ。他の誰も聞こえなかったけど、あなたは聞こえた。
妻のゲルダに語るリリーのセリフから紹介する2つ目はこちら。アイナーがリリーになるきっかけを作ったのは妻のゲルダでした。そのことについて、リリーはこのように話しました。
no oneは「誰も(一人も)~ない」という否定文を作る主語で、「他の」という意味の else を合わせると「(ゲルダ以外の)他の誰も」という意味となります。このセリフでは You heard や you did と、you が主語の部分には can(could) が使われていません。ゲルダはアイナーの望みを「聞くことができた」のではなく「自然に聞こえた」ということを表わしています。
リリーからゲルダへの言葉で最後に紹介するのはこちら。
deserve は「値する、ふさわしい」という意味の動詞で、”How do I serve such love?” で「どうやったら私はそんな愛(ゲルダの献身的な愛)に値するだろう?」という現在形の文を、「これまでずっと」と表す現在完了形の文章でさらに”ever”(一体)という協調の意味を付け加えたのがこのセリフです。日本語に訳しにくいのですが、直訳的に言うと「私はこれまで一体どうやってそんな愛に値してきたでしょう?」となります。
名俳優の演技が光るこの映画を英語学習に役立ててみてくださいね。
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