オバマ候補のスピーチを読む 彼は何を訴えてアメリカ大統領になったのか?

日本でも大きな関心を集めた2008年のアメリカ大統領予備選挙。演説(スピーチ)がうまいと有名になった民主党のバラック・オバマ候補の演説に、あなたも浸ってみませんか?
これは、2008年1月3日に行われたアイオワ州の党員集会で勝利をおさめたオバマ候補のVictory Speech(勝利演説)です。全米で最初の大統領選だったことから、オバマ氏にとって非常に幸先の良いスタートとなりました。
このVictory Speechは、Youtubeでも最も視聴されているオバマ氏のスピーチとなりました。スピーチをすべて自らYoutubeに載せているというところもアメリカらしいですよね!


オバマ候補は、ケネディやキング牧師の再来とも言われるほどスピーチが上手なことで有名です。
リスニングが得意でないあなたも、このスピーチを聞いてみれば、きっとその力強さを感じるはず!
ぜひ下の日本語訳と解説を合わせて、オバマ氏のスピーチを味わってみてくださいね。
上の映像の再生ボタンを押して、スピーチを聞きながら、下の英語の原文、日本語による訳と解説をお読みください

Thank you, Iowa.
ありがとう、アイオワ


You know, they*1 said this day would never come.
彼らは、こんな日は決して来ないだろうと言いました。



They said our sights were set too high.
彼らは、我々の目標は高すぎると言いました。



They said this country was too divided; too disillusioned to ever come together around a common purpose.
彼らは、この国は分裂しすぎていて、幻滅しすぎており、共通の目的のもとに集まることは不可能だと言いました。



But on this January night – at this defining moment in history – you have done what the cynics said we couldn’t do. You have done what the state of New Hampshire can do in five days. You have done what America can do in this New Year, 2008. In lines that stretched around schools and churches; in small towns and big cities; you came together as Democrats, Republicans and Independents to stand up and say that we are one nation; we are one people; and our time for change has come*2.

しかしこの1月の夜、この歴史上決定的な瞬間に、あなたがたは皮肉家たちができないと言ったことを成し遂げたのです。あなたがたは5日後にニューハンプシャーでできることを成し遂げた。あなたがたはこの新しい2008年にアメリカができることを成し遂げたのです。学校や教会の周りに伸びる行列で、小さな町や大きな都市で、あなたがたは、民主党支持者、共和党支持者、無党派として一緒になった。立ち上がってこう言うために。我々は1つの国だ。我々は1つの国民だ。そして我々が変革する時は来た、と。



You said the time has come to move beyond the bitterness and pettiness and anger that’s consumed Washington*3; to end the political strategy that’s been all about division and instead make it about addition – to build a coalition for change that stretches through Red States and Blue States*4. Because that’s how we’ll win in November, and that’s how we’ll finally meet the challenges that we face as a nation.

あなたがたは、ワシントンを包み込んできた敵意や質の低さや怒りを超えて動く時、分裂そして代わりの付け足しに関してばかりだった政治的戦略を終わらせる時が来たと言ったのです。赤い州と青い州にまたがり、変革のために協力体制を作るために。なぜならそれが、我々が11月に勝利する方法であり、我々が国として直面する困難についに立ち向かう方法だからです。



We are choosing hope over fear. We’re choosing unity over division, and sending a powerful message that change is coming to America.

我々は恐れよりも希望を選びます。我々は分裂よりも結束を選びます。そして、変革は来ているという力強いメッセージをアメリカに送ります。



You said the time has come to tell the lobbyists*5 who think their money and their influence speak louder than our voices that they don’t own this government, we do; and we are here to take it back.

あなたがたは、自分のお金や影響力が我々の声よりも雄弁であると思っているロビイストに、彼らがこの政府を所有しているのではなく、我々が所有しているのだと、そして我々はこれを取り返すためにここにいると言ったのです。



The time has come for a President who will be honest about the choices and the challenges we face; who will listen to you and learn from you even when we disagree; who won’t just tell you what you want to hear, but what you need to know. And in New Hampshire, if you give me the same chance that Iowa did tonight, I will be that president for America.

我々が直面する選択や困難に正直であり、あなたがたの声に耳を傾け、意見が一致しない時でもあなたがたから学び、あなたがたが聞きたいことだけを言うのではなく、あなたがたが知る必要のあることを言う大統領の時代が来たのです。そしてニューハンプシャーで、もしあながたが、今夜アイオワがくれた同じチャンスを私にくれるのならば、私はアメリカのためにそんな大統領になります。


(下に続く)

<<解説>>
1. they(彼ら)とは、我々(自分とその支持者たち)以外を指しています。アメリカのレトリック(弁論)ではわかりやすい二項対立がよく用いられますが、これもそのいい例ですね。

2. “change”(変革)はオバマ候補の大統領選におけるキーワード。この一文から、”the time has come….”(その時は来た)というフレーズを繰り返し使ってリズムをつけています。

3. Washington(ワシントン)は、アメリカの政治の中心地。日本で言う「永田町」のイメージでしょうか。オバマ候補は、上院議員としてワシントンでの政治に深くかかわってきたヒラリー候補との差を強調しています。

4. Red States(赤い州)とは共和党支持者の多い州、Blue States(青い州)とは民主党支持者の多い州のこと。選挙のニュースでは、アメリカ全土の州が赤と青に塗り分けられます。

5. lobbyist(ロビイスト)とは、アメリカの政治に欠かせないプレーヤーです。企業や団体から雇われた人々で、彼らに有利な政策を行うように議員に積極的に働きかけるのです。日本の政治ではこのような働きかけは不公平を招くと規制されていますが、アメリカでは自由競争の原理の元、活動は認められています。

Thank you.
ありがとう


I’ll be a President*6 who finally makes health care*7 affordable and available to every single American the same way I expanded health care in Illinois – by–by bringing Democrats and Republicans together to get the job done.

私は、イリノイ州で私が医療(ヘルス・ケア)を拡大したのと同じ方法で、一緒にこの課題を解決するために民主党と共和党を一つにまとめることによって、ついに医療を一人一人すべてアメリカ国民にとって手の届く値段で利用可能なものにする大統領になります。



I’ll be a President who ends the tax breaks for companies that ship our jobs overseas and put a middle-class tax cut into the pockets of the working Americans who deserve it.
私は、我々の仕事を海外へと移転させる企業に対する減税を廃止する大統領になり、中流階級への減税をそれに値する働くアメリカ国民のポケットへ入れます。


I’ll be a President who harnesses the ingenuity of farmers and scientists and entrepreneurs to free this nation from the tyranny of oil*8 once and for all.

私は、石油の専制からこの国をきっぱりと開放するために、農業従事者や科学者や企業家たちの創意工夫を活用する大統領になります。


And I’ll be a President who ends this war in Iraq and finally brings our troops home; who restores our moral standing; who understands that 9/11*9 is not a way to scare up votes, but a challenge that should unite America and the world*10 against the common threats of the twenty-first century; common threats of terrorism and nuclear weapons; climate change and poverty; genocide and disease.

そして私は、このイラクでの戦争を終わらせ、我々の軍隊をホームへとついに帰還させる大統領、モラルの水準を回復させる大統領、9/11の出来事は票をかき集めるための手段ではなく、21世紀の共通の脅威・テロリズムと核兵器の脅威・気候変動や貧困・虐殺や病気に対してアメリカと世界を一つにするべき課題であると理解している大統領になります。



Tonight, we are one step closer to that vision of America because of what you did here in Iowa. And so I’d especially like to thank the organizers and the precinct captains; the volunteers and the staff who made this all possible.

今夜、あなたがたがここアイオワで成し遂げたことにより、我々はそんなアメリカの姿に1歩近づいたのです。だからこそ私は、このすべての可能にした事務局や選挙区幹事、ボランティアの方々やスタッフに特に感謝したいと思います。

(中略>下に続く)

<<解説>>
6. 前の段落の最後からつなげて、”I’ll be a President who….”(私はこんな大統領になります)を繰り返して公約を表しています。オバマ氏はこうやって同じフレーズをスピーチの中で繰り返すことにより、人々が聞きやすく、理解しやすいスピーチにしているんですね。

7. health care(医療/ヘルス・ケア)は、今回の大統領選で大きな論点となっています。日本と違ってアメリカには国民保険がなく、保険の加入は任意なので、保険に入っていない人が病院から治療を断られたり後回しにされたりするということが大きな問題になっています。

8. oil(石油)はアメリカの政治に大きな影響力を与えているものです。特に石油とブッシュ大統領とのつながりは非常に強く、彼は大学卒業後テキサスで石油事業を興し、大統領選挙でも石油・エネルギー業界から2250万ドル(20億円以上!)の資金を提供されたと言われています。このため、イラク戦争も”oil war”(石油のための戦争)と呼ばれました。

9. 9/11(nine elevenと読まれます)とは、もちろん2001年9月11日に起こった同時多発テロのことを指します。アメリカを語る上で、今ではもう欠かせない出来事ですね。

10. そして、9/11後のイラク戦争、京都議定書などで世界の他の国々と距離を広げたアメリカでしたが、オバマ氏はunite(団結)すべきだと語っています。

(中略 / ビデオの10:30~)

Years from now, you’ll look back and you’ll say that this was the moment – this was the place – where America remembered what it means to hope*11.
今から数年後、あなたがたは振り返り、これがその瞬間だった、ここがその場所 – アメリカが希望という意味が何であるかを思い出した場所 – だったと言うでしょう。


For many months, we’ve been teased, even derided for talking about hope.
何ヶ月もの間、我々は希望を語るとからかわれ、ばかにされさえしました。


But we always knew that hope is not blind optimism. It’s not ignoring the enormity of the task ahead or the roadblocks that stand in our path. It’s not sitting on the sidelines or shirking from a fight. Hope is that thing inside us that insists, despite all evidence to the contrary, that something better awaits us if we have the courage to reach for it, and to work for it, and to fight for it.

しかし我々は、希望は盲目の楽観主義ではないと常に知っていたのです。先の課題や我々の道に立ちはだかる障害物の巨大さを無視しているのではありません。脇で座っていたり、戦いを回避したりしているのではないのです。希望は、我々の内側にあり、反対を示すすべての証拠にもかかわらず、我々がそれに手を伸ばし、そのために努力し、そのために戦う勇気を持つならば、今よりも良いことが我々を待っていると訴えるものなのです。



Hope is what I saw in the eyes of the young woman in Cedar Rapids who works the night shift after a full day of college and still can’t afford health care for a sister who’s ill; a young woman who still believes that this country will give her the chance to live out her dreams.

希望とは、私が1日中大学に行った後夜のシフト(時間帯)で働き、それでも病気の妹の医療を払う金銭的な余裕のない、セダー・ラピッズの若い女性、この国は自分に夢を実現するチャンスをくれるだろうと今も信じている女性の目の中に私が見たものです。



Hope is what I heard in the voice of the New Hampshire woman who told me that she hasn’t been able to breathe since her nephew left for Iraq; who still goes to bed each night praying for his safe return.

希望とは、彼の甥がイラクへ行ってしまって以来息をすることがずっとできないと私に語った、今も毎夜彼の無事の帰りを祈って眠りにつくニューハンプシャーの女性の声の中に私が聞いたものです。



Hope is what led a band of colonists to rise up against an empire*12; what led the greatest of generations*13 to free a continent and heal a nation; what led young women and young men to sit at lunch counters and brave fire hoses and march through Selma and Montgomery for freedom’s cause*14.

希望とは、入植者の集団による帝国に対する反乱を導き、偉大な世代による大陸の開放と国家の治癒を導き、若い女性と若い男性が軽食堂に座り、消防ホースをものともせず、自由という大義のためにセルマやモンゴメリーを行進することを導いたものです。



Hope-hope-is what led me here today – with a father from Kenya; a mother from Kansas; and a story that could only happen in the United States of America. Hope is the bedrock of this nation; the belief that our destiny will not be written for us, but by us; by all those men and women who are not content to settle for the world as it is; who have the courage to remake the world as it should be.

希望 – 希望とは、ケニア出身の父とカンザス出身の母、そしてアメリカでしか起こりえなかったストーリと共に私を今日ここに導いたものです。希望とはこの国の基盤です。我々の運命は我々のためにではなく、私たちによって、今のままの世界に満足して安住せず、あるべき世界に作り変える勇気を持つすべての男女によって書かれるという信念なのです。



That is what we started here in Iowa, and that is the message we can now carry to New Hampshire and beyond*15; the same message we had when we were up and when we were down; the one that can change this country brick by brick, block by block, calloused hand by calloused hand – that together, ordinary people can do extraordinary things; because we are not a collection of Red States and Blue States, we are the United States of America; and at this moment, in this election, we are ready to believe again. Thank you, Iowa.

これが、ここアイオワで我々が始めたことです。そしてこれが、我々がニューハンプシャーとその先へと我々が今伝えることができるメッセージなのです。それは我々がうまくいっている時もうまくいっていない時も持っていたメッセージであり、一つ一つ、ブロックごとに、たこのできた手によってこの国を変えることができるメッセージなのです。普通の人々も並外れたことができるのです。なぜなら、我々は赤い州と青い州の集まりではなく、我々はアメリカ合衆国だからです。そしてこの瞬間、この選挙で、我々は再び信じる用意ができているのです。ありがとう、アイオワ。


<<解説>>
11. hope(希望)という言葉を、オバマ氏はスピーチのキーワードに置いています。アメリカらしい言葉/アイデアですね。

12. アメリカの入植者が、独立戦争で大英帝国に立ち向かったことを指します。この国を作った基礎と言っていいですね。

13. Greatest Generationとは、第2次世界大戦を戦ったアメリカ国民を指す言葉。

14. キング牧師が公民権運動で1965年にアラバマ州のセルマからモンゴメリーへ行進したことを指します。オバマ氏はこのようなアメリカの歴史を作ってきた出来事のすべては「希望」によって導かれたと語りました。

15. 今回アイオワでの全米初の大統領選に勝利を、次の選挙が行われるニューハンプシャーそしてこれから選挙が行われる他の州へつなげていきたいという訴えですね。


いかがでしたか、オバマ候補のアイオワでのスピーチ?
彼の力強い話し方と観衆との一体感は、英語がよくわからなかった人にも訴えかけてくるものがあったと思います。
彼のスピーチが上手いと言われる理由は、まずは簡単な言葉を使っていること(日本の政治家とは大違いです)、そしてそれを繰り返してリズムを作り、聴衆が聞きやすく、理解しやすいものにしているからではないでしょうか。
彼が繰り返し”unite”(団結)や”one ….”(1つの~、国・国民など)を訴える背景には、アメリカが多民族国家であり、日本よりもはるかに格差社会であるがゆえに、人々がその違いによって分断されていることが問題として挙がっているからでしょう。
果たして彼は大統領になって、この状況に”change”(変革)をもたらし、アメリカをまとめることができるのでしょうか。
これからもますます目の離せない、アメリカ大統領選です。

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