オバマ元大統領からバイデン次期大統領へのお祝いメッセージを英語で読む

2020年のアメリカ大統領選の結果、次期大統領には民主党候補のジョー・バイデン氏が選ばれることが濃厚になり、バイデン氏も勝利宣言を行いました。それを受けてオバマ元大統領(厳密には現トランプ大統領の一代前なので前大統領)がTwitterで送った声明文(Statement)です。冒頭で次期バイデン大統領と次期ハリス副大統領に祝辞を述べながら、後半はアメリカ国民へのメッセージを含んだ内容となっています。どんな言葉を送っているのか、実際の英語の文章(全文)と日本語訳、解説です。

I could not be prouder to*1 congratulate our next President, Joe Biden, and our next First Lady, Jill Biden.

私たちの次の大統領 ジョー・バイデンと、私たちの次のファースト・レディー ジル・バイデンを祝福することを、これ以上ないほど誇りに思います。

I also couldn’t be prouder to congratulate Kamala Harris and Doug Emhoff for Kamala’s groundbreaking*2 election as our next Vice President.

また、カマラ・ハリスとダグラス・エムホフが私たちの次の副大統領として画期的な選挙を行ったことを祝福することも、これ以上ないほど誇りに思います。

In this election, under circumstances never experienced, Americans turned out*3 in numbers never seen. And once every vote is counted*4, President-Elect Biden and Vice President-Elect Harris will have won a historic and decisive victory.

この選挙では、経験したことのない状況下で、見たことのない数のアメリカ人たちが現れました。そして、すべての投票が数えられた時、バイデン次期大統領とハリス次期副大統領が歴史的かつ決定的な勝利を収めることになるでしょう。

We’re fortunate that Joe’s got what it takes to*5 be President and already carries himself*6 that way. Because when he walks into the White House in January, he’ll face a series of extraordinary challenges no incoming President ever has – a raging pandemic, an unequal economy and justice system, a democracy at risk, and a climate in peril*7.

ジョーは大統領になるために必要なものを手に入れており、すでにそのように振る舞っていることは、私たちにとって幸運なことです。なぜなら彼が1月にホワイトハウスに入る時、彼は次期大統領がこれまでに経験したことのない一連の並外れた課題に直面することになるからです ー 荒れ狂うパンデミック、不平等な経済と司法制度、危険にさらされている民主主義、そして危機に瀕している気候です。

(>下に続く)

<< 解説 >>

  1. 初めから少しややこしい表現が使われていますが、couldn’t/can’t be ~(形容詞の比較級) で「これ以上~なことはない」つまり「最高に~だ」という表現です。日本語でも例えば嬉しい時に「こんなに嬉しいことはない」と言う表現と似ていますね。過去形の couldn’t を使うことで、現在形の can’t よりも「~だろう」という推定の意味が強められます。オバマ元大統領は proud「誇りに思う」という形容詞を使って、祝福の意を表しました。日本語では「あなたのことを誇りに思う」とはあまり言いませんが、英語では “I’m proud of you.”(あなたのことを誇りに思う)というのは、相手を讃えたり褒めたりする時にわりとよく使われるフレーズです。
  2. groundbreakingは「画期的な、革新的な」という意味の形容詞で、由来はground(地面、グラウンド)を break する(壊す、割る)ほど破壊力・突破力が大きいというところから来ています。ちなみにこの文に出てくるダグ・エムホフはカマラ・ハリス氏の夫で、米国史上初の「セカンド・ジェントルマン」(ファースト・レディの反対版ですね)になります。
  3. turn out は「集まる、繰り出す、現れる」という意味で、これは今回の選挙で投票した(投票に繰り出した)人たちが過去最高の人数に上ったことを指しています。これまでは2008年の大統領選挙でオバマ氏が獲得した票数が過去最高でしたが、今回はそれをトランプ、バイデンとも上回り、バイデン氏が最高得票数を得ました。
  4. このオバマ元大統領のメッセージでも “every vote is counted” というフレーズが使われています。今回の選挙で最大の争点となっている「(郵便投票も含めた)すべての票を集計する」という点に触れられています。
  5. what it takes to V(動詞) は、「Vするために必要なもの、欠かせないもの」という意味で、take の「(時間などが)かかる」という意味から「Vするのにかかるもの」と直訳的には理解できるかと思います。ここでは、be President =大統領になるために必要なもの、と言っていますが、これは自分の政権下で副大統領を務めたバイデン氏の経験値の高さを表わしています。また、Joe’s は「ジョーの」ではなく、Joe has という現在完了形のhasが省略された形なので、惑わされないでくださいね。
  6. carry は「運ぶ」という意味の動詞ですが、carry oneself(直訳すると、自分自身を運ぶ)で「振る舞う」という意味です。
  7. ここで挙げられている challenges(課題、挑戦、困難)の具体例は、すべて最近のアメリカ社会で大きな問題となっている点で、選挙戦でも争点となっていました。パンデミックは新型コロナウイルス感染拡大状況、不平等な経済や司法制度は大きな経済格差・富の不均衡(2011年には「Occupy Wall Street/ウォール街を選挙せよ」というデモ運動が起こりました)と今年「Black Lives Matter/ブラック・ライブズ・マター」運動が起こった黒人(人種)差別、危険にさらされている民主主義はトランプ大統領があおっている民主主義の根幹である選挙への攻撃、気候は地球温暖化問題(これによって今年はカリフォルニアなどで甚大な山火事被害が起こったと考えられています)と、本当に問題が山積みのアメリカ社会です・・。

I know he’ll do the job with the best interests of every American at heart, whether or not he had their vote. So I encourage every American to give him a chance and lend him your support. The election results at every level show that the country remains deeply and bitterly divided*8. It will be up to*9 not just Joe and Kamala, but each one of us, to do our part – to reach out beyond our comfort zone*10, to listen to others, to lower the temperature and find some common ground from which to move forward, all of us remembering that we are one nation, under God.

彼は、自分に投票したかどうかにかかわらず、すべてのアメリカ人の最善の利益のために心から仕事をすることを私は知っています。ですから、私はすべてのアメリカ人に、彼にチャンスを与え、彼にあなたの支持を与えることを勧めます。選挙結果はすべてのレベルで、国が深くそしてひどく分断されたままであることを示しています。ジョーとカマラだけでなく、私たち一人一人が自分の役割を果たすことにかかっています ー 自分たちの安全地帯を超えて手を差し伸べ、他の人たちの話を聞き、冷静になり、前進するための共通の基盤を見つけること ー 私たち全員が、私たちが神の下にある一つの国であることを思い出すのです。

(>下に続く)

<< 解説 >>

  1. アメリカ社会の分断は、この選挙結果を巡る対立からも明らかになりました。この「分断」を表わすのに使われる単語が divide です。deeply(深く)という副詞と合わせて使われているのが bitterly ですが、「苦い」という意味の bitter からも想像できるように、マイナスな意味合いの強い「ひどく」という意味です。
  2. up to A で「Aにかかっている、A次第」という意味です。オバマ元大統領は、この状況を改善するには大統領と副大統領だけではなく、アメリカ国民一人一人が役割を果たす(do one’s part)ことが必要なのだと行っています。オバマ氏は自らの就任演説でも同じような以下のメッセージを発していました。“For as much as government can do and must do, it is ultimately the faith and determination of the American people upon which this nation relies.”「政府に何ができ、政府が何をしなければならないかということと同様に、この国にとって頼りとなるのは、つまるところ、アメリカ国民の信念と決意なのです。」
  3. comfort zone は「安全地帯、自分が心地よくいられる範囲」という意味です。何か新しいことに挑戦したり、自分を成長させるためには、この comfort zone から出る必要がある、というのはアメリカでよく使われる表現です。

Finally, I want to thank everyone who worked, organized, and volunteered for the Biden campaign, every American who got involved in their own way, and everybody who voted for the first time. Your efforts made a difference*11. Enjoy this moment. Then stay engaged. I know it can be exhausting. But for this democracy to endure, it requires our active citizenship and sustained focus on the issues – not just in an election season, but all the days in between.

最後に、バイデン陣営の選挙活動に取り組み、取りまとめし、ボランティアをしたすべての人、それぞれの方法で選挙に関わったすべてのアメリカ人、そして初めて投票したすべての人に感謝したいと思います。あなたの努力が違いを生んだのです。この瞬間を楽しんでください。そして関わり続けてください。それが疲れ果てさせうるものだとはわかっています。しかし、この民主主義が持続するためには、選挙の時期だけでなく、その間のすべての日において、私たちの積極的な社会参加と問題への継続的な注目が必要なのです。

Our democracy needs all of us more than ever. And Michelle and I look forward to supporting our next President and First Lady however we can.

私たちの民主主義はこれまで以上に私たち全員を必要としています。そしてミシェルと私は、次期大統領とファーストレディをいかなる方法でも支援することを楽しみにしています。

<< 解説 >>

  1. make a difference は直訳で「違いを作る・生む」という意味ですが、「変化を起こす、状況を良くする」という意味で政治やビジネスの場でもよく使われるポジティブな表現です。コカ・コーラ社は自分たちの目的(Our Purpose)として “Refresh the world. Make a difference.” と掲げています。
未だにアメリカ国内で人気が高く影響力のあるオバマ元大統領。丁寧な祝福のメッセージは、次期大統領と副大統領に向けてだけではなく、アメリカ国民に向けての今後の政治や社会への関わり方を説く内容となっています。

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